展評 「古萬古 ―弄山生誕301年目の春―」展

  • 2019/3/11

四日市に来て25年近く。萬古焼の面白さに気付いたのは、ここ5,6年のこと。中学生のころ、2キロ半ほどの通学路には、地元の松代焼(長野市)を並べた、陶器屋、骨董品屋、そして床屋があった。床屋のは、店主のコレクション。博物館もいくつかあった。ただで入れた。そんなところによく寄った。道草である。松代焼は江戸期に始まった。狭い地域での産業だが、窯や時代でずいぶん違う、ような気がしていた。萬古焼のバラエティは、その比ではない。とにかく分布が広い。時間的には、松代焼と大きな違いはないだろう。書物や解説で読む限り、それぞれの作家や窯の事情もあるようだ。

「古萬古 ―弄山生誕301年目の春―」展。会場は四日市市文化会館。萬古焼の開祖沼波弄山の作品25点と、弄山の死後半世紀を経て、それを再興した森有節の作品が22点、そして、有節の弟の千秋の作品が3点展示されている。3人の作品は、いろいろな形で、たびたび見ている。その度に、この3作家だけでも、意匠、造形、そして作り方にかなりのバラエティを感じてきた。今回も、それを感じた。

特に、面白いのは、弄山と有節の相当数の作品が、隣り合って並べられたところだ。これまで、なんとなく感じていたことが、そのことで際立って見えた。弄山は、こう言ってよければ、かなり自由で奔放な感じがする。習作あるいは実験的作品も少なくないような。有節の作品は、緻密で、丁寧で、そこからは独自の完成されたものへのこだわり、のようなものを感じる。技巧的、という言い方もあるのかもしれない。たまたま、会場においでになった、以前から色々とお世話になっている学芸員の方に、そんな話をした。同じような見方をしていらっしゃる由。

萬古焼の展覧会では、毎回、それまで気づかなかったことを見つける。バラエティのせいもあるのかもしれない。今回も、いくつか見つけた。通学途中の道草、という訳にはいかないが、また、足を運びたくなる。この展覧会も、ただで入れる。( A. T. )

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