書評 プレイバック・ビブリオバトル(1)  『君の膵臓が食べたい』(1)

  • 2019/3/13

『君の膵臓が食べたい』 住野よる著 2015年 双葉社

 

この本は、2018年度のビブリオバトルでも、紹介された。しかも、2人の学生が、別の回に。2人の話に、気になる共通点があった。情景描写が細かくてイメージしやすい、という。この作品は映画化されている。映画と比べて、どちらが面白いか、と同じ質問をした。それに対する、答えである。自分が紹介しない回には、どちらの学生も会場にはいなかったので、真似、ではない。

専門柄、新聞に掲載された、一枚の写真、たとえばテロ事件現場周辺での、一枚の写真のイメージが、記事の本文以上に雄弁であることは、しばしば、経験する。2人の学生の話とは、さしずめ、逆である。読まないわけには、いかない。

冒頭に、女の子の死がある。そして、死の予感があったことを、うかがわせる。男女ふたりの高校生を中心に話は進む。ふたりは同級生。笑いと剽軽さが、不安や悲しさと同居して、恋なのかどうかを迷い迷わせながら、意思の疎通と不通の綱渡りをする二人のやり取りが、面白くて、切ない。青春っていいな、とつぶやきたくなる。でも、きっとしんどい。ただ、予感の実現を覚悟して読み進めるだけでは、終わらなかった。読了後、まずは、すなおに泣けた。あとから、少し、ゾワゾワした。そして、頷けた。

いろいろに泣ける。小学校に入る前、砂場で、砂山を作るのが気に入っていた。こんな形にしよう。高さはこのくらい。トンネルもひとつ。完成間近になると、決まって、崩れる。時にはトンネルが、時には、飛んできたボールがぶつかって。まずは、そんな感じで、泣けた。色々な涙が、しばらく続いた。

何ってことはない日常の人間関係のなかで、自分が知らない事情を、その人は抱えているかもしれない。そんな関係は、どこにでもありうる。自分のまわりにも、あるかもしれない。きっと、あるに違いない。ひとしきり泣いてから、そう思った。少し、ゾワゾワした。つづく。( A. T. )

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