時事雑感  胃腸風邪と武満徹

  • 2019/6/21

ひどい胃腸風邪にやられ、三日間ほど寝込んだ。ここ半年ほど乱調気味で、寝込むのは3回目だ。最初は肺炎。次は眩暈。そして今回。詳細は省けれど、寝る以外のことはできないし、やる気も起こらない。いや、トイレにはいかざるを得ない。詳細は省くけれど。厄介なのは、体の他の部分は、なかんずく頭はわりと正常に動くので、退屈だ。

布団のなかでできることと言えば、音楽を聴くことぐらいだろう。今回は、武満徹をまとめて聞いた。80年代の著作をまとめて読んだ時、なぜか武満の話がほとんどなかったのが引っかかっていた。同人誌『アディアフォラ』の仲間たちとは、映画や演劇の話と同じくらい、武満の話もしたはずだけれど。

30曲ぐらいは聞いただろう。同じ曲を別の奏者で聞いたり、繰り返し聞いたりもした。もちろんトイレの中断と寝落ちの幕間は頻繁に。回数だけで言えば、「秋庭歌一具(しゅうていがいちぐ)」を一番聞いた。1時間前後の雅楽だ。中央の「秋庭」とまわりの「木魂群(こだまぐん)」に楽器が置かれる。音楽の聴き方は色々だが、今回は、都合上、部屋の電気を落とし、目を瞑りながら聞いた。「秋庭歌一具」を聞くのはこれが初めてではない。ただ、こんな聞き方をしたのは、おそらく初めてだ。そのせいもあるのだろう、以前聞いたときとはかなり感じが違った。

あいにく雅楽の楽器には自信がなく、どの音がどの楽器から出ているのかはよくわからない。いや、楽器の名前が分からないと言った方が正確か。何回か聞くうち、打楽器の音が耳に残った。打楽器だけの演奏では、その音が何か所か別のところから出されているのが分かる。その聞こえてくる方向が変わるせいで、楽器が置かれている空間の広がりが頭のなかに再現された。その音色は水琴窟のようでもあり、茶庭のような景色がまず頭に浮かんだ。それを手掛かりに音を追いかけると、流水の音、あるいは草木の様子を感じさせる音があり、風も吹いているようだ。時に、外から入り込む借景のような、少し感じの違う音の並びもある。そのうち、打楽器の音が鹿威しの音に聞こえ始めた。想像はつきない。

布団に籠って、体重を1キロほど減らしながらの雅楽の体験だった。(A.T.)

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