時事雑感 歴史的つぶやき?(1)(2)

  • 2019/7/2

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 ニュース番組、特に、どこかからの中継を見ていると、時に「歴史的瞬間」に立ち会うことがある。今回はNHKが流し続けた米韓首脳会談の様子を見ていた。もちろん、主な関心は、事前に騒がれていたキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長とトランプ大統領との会談だ。キム委員長が嬉しそうに姿を現す。38度線を挟んで握手を交わす。トランプ大統領のつぶやきが功を奏して、キム委員長との面会が実現した。ほどなく、トランプ大統領が北朝鮮に足を踏み入れた。現職の米国大統領が、史上初めて、北朝鮮に入った。「歴史的瞬間」である。ふたりは38度線を越え、北朝鮮側と韓国側とを往来した。近くには韓国のムン・ジェイン大統領もいた。

どうも引っかかることが2つある。ひとつは、本当に「歴史的瞬間」だったのか、と言うことだ。そして、もうひとつは、つぶやき、の話である。

2009年4月5日、CNNがオバマ大統領のプラハでの演説を中継していた。この時も30分ほどの演説をライブで聞いた。EUとの初めての首脳会議にあわせてチェコを訪問中のオバマ大統領が、演説をする話は事前に知っていた。ただ、内容までは報道されておらず、突然の発表だったと思う。核兵器の廃絶。はっきりと覚えているのは、同時通訳も字幕もなかったので、一瞬聞き間違えたか、と思ったことだ。「歴史的瞬間」だったことは、その後のニュースで確認できた。

ただ、「歴史的瞬間」というのは、時に、本当にその瞬間だけのことがある。その瞬間の、前と後では、実際にはあまり大きな違いがないことに気づかされる。オバマ大統領は、プラハ演説もあり、ノーベル平和賞を受賞した。ところが、米国は、その後も核兵器を持ち続け、核実験も実施している。今回の米朝首脳会談はどうだろう。つぶやく、というやり方ばかりが注目されはするものの、本当に何かのきっかけになったのだろうか。この出来事を、「歴史的瞬間」とするか否かは、これからの両国ならびに周辺関係国の対応にかかっている。(A.T.)

 

(2)

 もうひとつ気になっているのが、つぶやきだ。結果だけを見れば、確かに米朝首脳会談は実現し、報じられている限りで言えば、トランプ大統領のつぶやきがそのきっかけとなっていたようだ。ただ、中継映像は、計画性のなさや、それ故の危険性をも伝えていた。

NHKの中継を見ていると、現場は、かなり混乱していたようだ。まず、送られてくる映像がライブなのかどうかが、しばらく判然とせず、「中継」の文字が画面に入ったのはしばらく経ってからだった。確かに、映像はしばしば中断し、しかも逆回しに見える場面もあった。キム委員長が姿を現すまでの間、そんな不思議な映像が続いた。報道陣や両国スタッフの動きも整理されておらず、後の報道で見るところでは、ホワイトハウスのスタッフがキム委員長の護衛を肘で突き飛ばすような場面もあったという。準備不足のイベントであった事が世界に伝えられた。

つぶやき、に反応する事への危険性がそこにはある。まず、つぶやきは公式なものだとは思えない。それにどのように反応するかが問題だろう。それに反応することで、つぶやきが公式のもの、あるいはそれに準ずるものになるのだとしたら、公式のやり取りを通じてでさえ突発事態の発生を避け難い緊張した状況では、つぶやきでのやりとりは危険過ぎよう。つぶやきでのコミュニケーションは感情的になりやすい。さらに、つぶやき、は取り消すことが簡単にできる。公式なものではないからだ。私的見解なのか政策方針なのかの変更も容易にできることになる。外交関係を混乱させるだけだ。

実際、今回の米朝首脳会談への評価は分かれているようだ。時に、離れ業は、ブレークスルーになるかもしれない。ただ、離れ業の繰り返しは、混乱の原因に他ならず、危険ですらある。確かに会談は実現した。とはいえ、むしろいま考えておくべきなのは、やり方の問題だろう。SNSで首脳会議を開いてしまって好いのだろうか。(A.T.)

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