時事雑感   再会した万年筆

  • 2020/3/16

  

 パンデミックのあおりでその雰囲気も気分もすっかり吹き飛ばされた感じはするが、卒業式から入学式までのこの時期、進学・就職シーズンと言っていいのだろう。何年か前まではこの時期にお祝いに何を贈るかずいぶん迷ったのを思い出す。最近はそんなこともなくなってしまった。最近では現金の方が喜ばれるし、そもそもそんな心配をしなければいけない世代が身辺からいなくなった、つまりこちらが齢を重ねた、というせいもある。

  ある時代まで、万年筆というのが進学・就職のお祝いには定番のひとつになっていた。何かの会話で愛用の文房具が話題になった時のこと、万年筆という存在を思い出した。もちろん万年筆は文房具屋に行けばすぐにでも見つかりそうなものだが、この時思い出したのは僕自身が持っているはずの何本かの万年筆の存在である。自宅の引っ越しや研究室の移動の時に見失ってから、もう何年にもなる。

   自分でも少なくとも3本は買っている。大学院に進学したとき、在ペルー日本大使館専門調査員に就任したとき、そして四日市大学に就職したときだ。それより前にも少なくとも2本はプレゼントされていたはずである。高校に進学したときと大学に進学したときである。どちらも伯父からもらった。都合5本になる。どれもお祝いや記念にもらったか買ったかしたものである。

  実は他にも万年筆を持っていた。中学生の頃、シャープペンシル2本分程度の値段の万年筆が人気商品になったことがある。700円前後ではなかったか。当時、赤色のボールペンは何故か高くしかもすぐに書けなくなってしまった。赤色鉛筆の芯はすぐに丸くなりしかもやたらと折れた。赤のシャー芯は固くて書きにくかった。ただでさえ細くて固い芯に、書きにくさからくる力が加わるのだから折れない訳がない。友人の誰かが言い出した。安い万年筆で赤インクを使った方が便利で、しかも長く使えるから経済的だ。赤インクにはもちろんカートリッジがある。

  万年筆が記念品やお祝いに使われていた時代のこと、万年筆にはどこか大人の感触や高級な感じの高い敷居があった。ただ、そのおそらく700円前後だった万年筆と赤色カートリッジの組み合わせは、カートリッジを買い足しながら長く使いさえすれば、確かに赤色のボールペンや鉛筆あるいはシャー芯よりも便利で安上がりのようではあった。好奇心もあり1本買い求めた。その時に買った万年筆は赤色専用にし、おそらく大学受験の頃まで使っていた。高校入学の時にもらった万年筆は、叔父には申し訳ないのだが、ほとんど使う機会はなかった。いずれにしても、赤い万年筆もどこかにはあるはずである。

 ごくごく最近、行方不明だった万年筆のひとつに再会した。カートリッジも2箱、一緒にあった。幸か不幸か赤い万年筆ではなかった。長らく使っていなかったのでインキに馴染ませることからはじめた。使えた。普段使いの文房具は今まで通りボールペンか鉛筆。ようやく再会できた万年筆には、いまは、ゆっくり構想を練る時のだけの愛用文房具になってもらっている。(富田与)

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